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HN:沙織(父)
難病患者は「制度の谷間」にあり、様々な支援が受けにくいと聞くけど、どういうこと?
深刻な症状が続き、治療法も確立していない難病患者への支援は、これまで主に医療の面で進められてきた。国が指定する特定疾患には、医療費負担の全部か一部を公費で助成する制度がある。1972年の制度開始時の4疾患から対象は広がり、今や56疾患に。受給者証の交付は2009年度、約68万件に達した。しかし一方で、生活や就労へのサポートは遅れている。
断続的、周期的に悪化を繰り返す難病の場合、症状が重いときには食事、買い物など家事の手助けが必要になる。闘病しながらの仕事の継続や治療後の再就職にも大きな困難がある。だが、介護保険や障害者自立支援法のサービスの対象にならない「制度の谷間」にある患者が多く、必要な支援が得られていない。
介護保険の訪問介護・看護などのサービスを受けられるのは原則65歳以上。パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症など、介護保険の特定疾病に当てはまる場合でも40歳から。若年患者は対象でない。
障害者自立支援法による介護や就労支援などを受けるには、原則として身体障害者手帳を持っていなければならない。手帳の対象は臓器、疾患別に決められ、これに該当しない
手帳を持たないことは、就職の際にもハンデとなる。企業に課せられた障害者の法定雇用率(1・8%)にカウントされないため、企業が採用に消極的になるケースがあるからだ。
難病患者も介護や家事支援を利用できる「難病患者等居宅生活支援事業」が設けられたが、実施している自治体は全体の4割程度と、今は頼れる制度がないのが実情だ。障害者政策の見直しを目指す内閣府の障がい者制度改革推進会議では、難病を含めた支援対象の拡大が論点の一つとなっている。
また、東日本大震災では、薬の入手が困難になったり、孤立したりした難病患者も目立った。安否確認から避難生活、医療機関受診の支援まで、災害時に難病患者を支えるネットワーク作りも今後の課題だ。(梅崎正直)