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HN:沙織(父)
また、放射線を帯びたブドウ糖を注射し体への取り込み具合を見るPET(陽電子放射断層撮影)検査も受けた。本来、がんの診断に用いられる検査だが、脳神経細胞の活動が活発だとブドウ糖を多く取り込み、損傷していると取り込まない違いを利用しようというものだ。
増谷さんはこの検査で、脳の活動が低下している部分が見つかった。軽度外傷性脳損傷のために、物忘れなどの高次脳機能障害の症状が表れたのではないかと診断された。
篠田さんは軽度外傷性脳損傷が疑われる50人以上の患者を診察し、この二つの検査で約6割に画像に異常が見つかった。検査法の確立を目指し、今後さらに研究を進める予定だ
と、書かれて終わっています。
おやぢの場合も、このPET検査を進められたのですが
完治できる治療としてならいいけど、検査だけじゃ・・・と受けませんでした。
(ここまでの検査をしなくても手帳・年金がOKとなった事もありましたが)
事故にあったのは8歳の時。登校途中、走ってきた体の大きな上級生に背後から突き飛ばされ、頭部を路面で強打して意識を失った。
画像検査では脳に異常は見つからなかった。だが、脚に十分な力が入らず、ゆっくりなら歩けるものの、大きくふらついてしまう。
学校は、母の八千代さん(48)が車で送り迎えをした。体育はすべて休み、掃除当番もできない。ひどい頭痛や刺すような胸の痛みもあり、主治医の整形外科医が処方する鎮痛剤を使ってもあまり効かなかった。
1年たっても治らず、「ずるをしてさぼっているのでは」という周囲の目に傷ついた。担任からは「事故で対人恐怖症になったのでは」と言われ、主治医には「学校で嫌なことがあるの?」と聞かれた。
「みんな、体の不調に耳を傾けてくれなかった」
「私はうそつきでも怠け者でもない」と示すために、痛みをこらえて学校に行った。中学校でもトップクラスの成績を維持し続けた。
だが、高校2年になると、少し動いただけでも高熱が出るようになり、胸や背中の痛みもますます激しくなった。下を向いたり、活字を目で追ったりするだけでめまいや吐き気が起こり、勉強が困難になった。
大学で心理学を学ぶ夢をあきらめ、高校を退学。その後、1日のほとんどを自宅で横になって過ごした。
昨年秋、記事で紹介されていた湖南病院(茨城県下妻市)院長、石橋徹さんを受診。やっと軽度外傷性脳損傷と診断された。
この病気とわかっても特効薬はないが、彩香さんは「うそや思い込みではないと証明されただけで、本当に救われた」と語る。心の重荷が取れ、最近は「少しでもリハビリになれば」と、八千代さんと近所に買い物に行く機会が増えた。
この1年足らずで、石橋さんが新たに診断をつけた患者は約200人。全国には、まだ埋もれている患者が多数いるとみられる。
続・見えない脳外傷(2)労災判定で軽症者扱い
CT(コンピューター断層撮影法)などの画像検査には映らない軽度外傷性脳損傷を、仕事や通勤中の事故で負っても、身体障害の等級を軽く判定され、十分な労災補償を受けられないことが多い。判定を不服とする東京都八王子市の臼井弘明さん(55)は、2008年に国を相手取り訴訟を起こした。
事故は、醸造酒開発の技術者として山梨県の地ビール工場で働いていた1997年に起きた。車を運転して帰宅中、高速道路でスリップして側壁に激突した。約3か月入院。首の骨を折る大けがだったが、頭部のCTには異常は見つからなかった。
ところが退院後、左半身まひや右半身の痛み、歩行時のふらつきなどの症状に襲われた。仕事柄、日本酒の銘柄をぴたりと当てるほど味覚や嗅覚には自信があったが、事故後は香りの違いが分からなくなった。
何度か職場復帰を試みたが、数分の立ち仕事で激しく疲労した。約3年間休職しても治らず、退職した。
その後も体調は悪化し、電車に乗ると意識を失い、目的の駅を何駅も過ぎることがたびたび起きた。めまいも頻繁になり、ほかの仕事にも就けなくなった。
労災保険の休業給付は受けたが、障害等級(重い方から1~14級)は、事故との因果関係が断定できないなどとして11級と判定された。このため8~14級の人に支払われる障害一時金は受けられたが、重症者(7級以上)が補償を長く受けられる障害年金の対象にはならなかった。
臼井さんの裁判を支援する、湖南病院(茨城県下妻市)院長の石橋徹さんは「医療は『まず画像ありき』ではなく、患者を診察して訴えを聞くことから始まる。脳外傷との因果関係は十分解明できる」と訴える。
一方、国は昨年、画像に映らない脳損傷についての見解として、「近代医学は検証できる明確な根拠をもって判断する。(中略)従って今は不可知の問題である」などとする医師の意見書を提出し、争っている。
患者らでつくる「軽度外傷性脳損傷友の会」の調べでは、患者側が労災の障害等級などを不服とし国を提訴する民事訴訟が近年相次ぎ、臼井さんを含め全国で7件起こされている。その最初のケースとなる臼井さんの裁判は7月、東京地裁で判決が言い渡される。
続・見えない脳外傷(3)脳脊髄液減少症も併発
体を強く打ち、軽度外傷性脳損傷と似た症状が出る病気に「脳脊髄液減少症」がある。
埼玉県の石川ヤヨヒさん(53)は2006年4月、車を運転中に対向車に正面衝突され、意識を失った。
すぐに我に返り、車外にはい出たが、激しいめまいで数歩しか進めず、道に座り込んだ。救急搬送された病院の整形外科で検査を受け、
だが入院して1か月たっても、めまいは治らなかった。壁などにつかまって立ち上がっても、ひざに力が入らず、一歩も進めない。3か月のリハビリで、つえをついてゆっくり歩けるようになったが、退院後も100メートル歩くのに40、50分かかった。
長く絵の講師をしていたが、右手がしびれてペンを握れなくなり、教室を閉じた。頭痛や目の痛みなども続いた。東京都内の病院を受診したところ、脊髄を覆う膜の小さな穴から液が漏れる脳脊髄液減少症と診断された。
この病気の治療には、あらかじめ採取した患者本人の血液を
石川さんの場合、いったんは、右手のしびれが消えた。しかし、1、2か月で再発。07年3月までに計4回受けたが、絵をきちんと描けるのは毎回、数か月だけだった。
「私の体はどうなっているのか」。知人の紹介で受診した病院で09年暮れ、脳に微細な損傷を受けたために痛みや片まひなどが起きる軽度外傷性脳損傷もあると診断された。味覚や嗅覚の低下、皮膚の知覚低下もこの病気の症状で、「食べ物をどれもまずく感じたり、手足にけがをしても痛まなかったりしたので気になっていた。事故が原因とは思わなかった」と驚く。
この二つの病気は、発症のきっかけや症状が似ており混同されやすい。また、まだ医師の間で広く認知されておらず、専門家同士の連携も進んでいない。国際医療福祉大熱海病院脳神経外科教授の篠永正道さんは「同じ患者が両方を併せ持つ可能性もあり、注意が必要だ」と指摘する。
軽度外傷性脳損傷 |
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頭部に衝撃を受け、一時的に意識を失ったり、もうろうとなったりした人の一部に起こる。神経細胞をつなぐ細かな線維の断裂などが原因と考えられている。頭痛、めまい、体の激痛、四肢まひ、視覚障害、味覚障害、排尿障害などが出る。 |
福井県の60歳代の女性は2006年、歩行中に車にはねられ、一時的に意識を失った。
ところが、依頼された仕事を繰り返し忘れるなど、物忘れが目立つようになった。倉庫に物を取りに行くと、途中で何を取りに来たのか忘れてしまう。長年続けた作業の手順も思い出せなくなり、仕事を辞めた。
精神科や心療内科を経て、2年前、福井県高次脳機能障害支援センター(福井市)を受診。検査の結果、知能や記憶力の低下がみられた。
センター長の小林康孝さん(神経内科医)は、女性の事故の状況や脳損傷が画像で確認できないことから、軽度外傷性脳損傷による高次脳機能障害と判断した。
治療は、簡単な計算や数字のパズル、会話をしながら迷路をなぞるなどの訓練と、メモやアラームを活用して日常生活での認知力の低下を補うリハビリに取り組む。事故から時間がたっても、一定の効果が期待できる。
この女性は、「財布、診察券、エコバッグ」など外出時に忘れがちな17品をメモ書きしたリストを作り、バッグに貼りつけた。しばしば空だきすることのある電気炊飯器には「スイッチを押す前に中を確認」と紙を貼った。
通院日などの予定は、リハビリスタッフが女性の携帯電話にアラームをセットし、画面に用件が表示されるようにした。
同センターの言語聴覚士、富田浩生さんは「当初は日常生活に大きな支障が出ていたが、最近は計算が速くなり、メモなどを活用して忘れ物も減った」と語る。
支援センターは全国各地に設けられている。リハビリの一環として、家族に病気の知識を深めてもらうことや、生活の支障を減らすための家庭での工夫の指導も行われる。
小林さんは「軽度外傷性脳損傷は、損傷そのものを治すことはできないが、高次脳機能障害による日常生活の支障はリハビリで減らすことができる」と話す。
続・見えない脳外傷(5)損傷「見える」検査へ工夫
従来の画像検査ではわからない軽度外傷性脳損傷を、検査法の工夫で「見える」ようにしようとの試みが進められている。
通い慣れた病院に向かう途中、突然、道が分からなくなる。鍋を火にかけていることを忘れる。ささいなことで怒り出す――。大阪府の主婦、
バイクで仕事先の幼稚園から帰宅中、乗用車と衝突し、頭を強く打って1か月入院した。症状はあるのに、脳のCT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)の検査では異常が見つからない。約20の医療機関を受診したが、多くの医師は「原因がわからない」「自律神経失調症ではないか」と繰り返した。
11年1月、岐阜県美濃加茂市の木沢記念病院・中部療護センター長の篠田淳さん(脳神経外科)=写真=を受診した。同センターは、自動車事故で脳損傷を受け、重い意識障害がある患者の治療と看護などを行う専門病院で、独立行政法人・自動車事故対策機構が設立した施設の一つだ。
軽度外傷性脳損傷は、神経細胞をつなぐ細かな神経線維の断裂などが原因と考えられているが、損傷が小さいため、通常のMRIでは捉えにくい。同センターは、健康な人の画像情報と比較することで、損傷したとみられる部分を際立たせて画像化する手法を研究している。増谷さんは脳中心部の神経が損傷していることが疑われた。
また、放射線を帯びたブドウ糖を注射し体への取り込み具合を見るPET(陽電子放射断層撮影)検査も受けた。本来、がんの診断に用いられる検査だが、脳神経細胞の活動が活発だとブドウ糖を多く取り込み、損傷していると取り込まない違いを利用しようというものだ。
増谷さんはこの検査で、脳の活動が低下している部分が見つかった。軽度外傷性脳損傷のために、物忘れなどの高次脳機能障害の症状が表れたのではないかと診断された。
篠田さんは軽度外傷性脳損傷が疑われる50人以上の患者を診察し、この二つの検査で約6割に画像に異常が見つかった。検査法の確立を目指し、今後さらに研究を進める予定だ
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