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HN:沙織(父)
高次脳機能障害を抱えてリハビリに打ち込み、復学が認められた和歌山大教育学部4年西村太助さん(25)が8日、4年ぶりの講義に出席した。
西村さんはグアテマラでスペイン語とマヤ遺跡について学んでいた2006年3月、バイクにはねられ、同障害になった。広島県立障害者リハビリテーションセンター(東広島市)などでリハビリに取り組み、学生生活を送れるまでに機能が回復した。
この日、西村さんは大学近くのアパートから、妹(20)と訪問介護事業所のヘルパーに付き添われて登校。午前と午後合わせて2コマの講義を受けた。
ライトノベルをテーマにした「大衆文化論B」の授業では、同4年波多野紘子さん(21)と同3年宮脇習介さん(20)が両脇に座り、ノートテイカーとしてサポートした。
西村さんは、手書きでは漢字が思い出せないことがあるが、携帯電話やパソコンでの文書作成は不自由なくできる。黒板に書かれた参考書の名前などを、携帯電話で文字を変換しながら、必死にメモしていた。
授業終了後、西村さんは、「今日はガイダンスだったので、まだまだこれから。少しずつ授業に慣れていきたい」と笑顔を見せた。
(2010年4月9日 読売新聞)
南米留学中の交通事故で高次脳機能障害になった和歌山大教育学部4年西村太助さん(25)(松江市法吉町)が、4年間のリハビリを経て4月、復学する。一時は「会話はできなくなる」と診断されたが、「もう一度学びたい」と願う西村さんを家族らが支え、身体の機能や言葉、専門知識を少しずつ取り戻した。大学側も介助やノートの代筆をする学生を募集するなどして、学生生活をサポートする。
西村さんは、2005年秋から、グアテマラの大学でスペイン語とマヤ遺跡について学んでいた。06年3月、遺跡の発掘調査に向かう途中、バイクにはねられた。あばら骨など5か所を骨折する重傷で、1か月後に帰国した。
頭に負傷はないように見えたが、グアテマラの病院で麻酔注射を受けた際、酸素吸入などの処置が遅れるなどしたため、高次脳機能障害が残ると診断された。日本の医師から「脳が高齢者並みに収縮し、左脳の損傷も激しい。もう話せないだろう」と告げられた。
その後、寝たきりの状態から広島県立障害者リハビリテーションセンター(東広島市)で訓練に取り組んだ。父の敏さん(56)らは、好きだった漫才を聞かせるなどしながら語りかけた。事故から4か月後、赤ちゃんがささやくように話し始め、車いすに乗れるようになった。
07年10月に家族らと中国・陝西省を訪問。
今も、記憶は途切れがちで、漢字が思い出せないなど完全な状態ではない。ものをなくしやすいなどの後遺症もある。しかし、好きだったスペイン語や歴史の知識は相当程度に回復、リハビリによる機能回復が認められ、復学が決まった。
西村さんは「障害者が旅行する環境の整備など、自分にしかできない研究を」と、大学に戻る日を待ち望む。
日本脳外傷友の会(神奈川県)の東川悦子理事長は「西村さんと同じ障害を持ち、学びたいと願う人の希望になる」と期待している。