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HN:沙織(父)
高次脳機能障害よりも世間ではなじみのない
脳脊髄液減少症を巡る交通事故裁判の高裁判決が30日あり控訴が破棄されました。
また、この際に厚労省の研究班「脳脊髄液減少症の診断・治療の確率に関する調査研究」
により作成された新基準が反映されるかも焦点でしたが全く触れられずに終わったようです。
脳脊髄液減少症について詳しく知る訳ではないのですが
その置かれた環境は少し前の高次脳機能障害と同じかと。
その辺の医療機関では門前払いされ医学的な検査でも
はっきりとした所見が得られる事は少ない。
またその検査基準もはっきりしていない等々・・・。
高次脳機能障害と同じく、身体に障害がなければ
その辛さは周囲の方に理解されない、云わば見えない障害の一つかと。
以下は、TVニュースと毎日新聞から
----------Tv asahi(5/30)のニュースから----------
前原海斗さん(16):「弁護士の先生とか治してくれたお医者さんに(裁判に)
勝って恩返ししたいと思って」
しかし、30日の判決も敗訴だった。小学3年生の時、自動車事故に遭った前原さ
ん。事故が原因で脳脊髄液が漏れ出て、頭痛やめまいなどを起こす「脳脊髄液減
少症」と診断された。その後、加害者と保険会社を相手取り、2億円余りを求めて
提訴したが、1審判決では事故との因果関係はおろか、病気の発症すら認められな
かった。医学の世界では、この病気の診断基準が確立していないためだった。
国際医療福祉大学脳神経外科・篠永正道教授:「(前原さんの画像を見ると)
本来、髄液がたまっているところの外に(脳脊髄液が)漏れている可能性が非常
に高い」
去年10月に厚生労働省は、脳脊髄液減少症の診断基準を作成したのだが、30日
の高裁判決では、一切触れられなかった。現在、高校2年生の前原さんは、今も事
故による病気と闘っている。
-----------毎日新聞(2012年05月30日)から------------
髄液漏れ:2審も認めず…東京高裁、新基準触れず
http://mainichi.jp/select/news/20120531k0000m040045000c.html
交通事故で脳脊髄(せきずい)液減少症を発症したかが争われた訴訟で、東京
高裁は30日、発症を否定した1審判決(11年3月)を支持、被害者の控訴を
棄却した。国の研究班により新たに作成された診断基準が、判断にどう反映され
るかが注目されたが、下田文男裁判長は新基準に一切触れず「髄液漏出があった
とは認められない」とした。被害者側は上告する方針。【渡辺暖】
◇小3で事故の原告
東京都練馬区の高校2年、前原海斗君(16)と両親が、車を運転していた男
性とあいおいニッセイ同和損保を相手取り、総額約2億1600万円の支払いを
求めていた。
1審判決は、04年にできた国際頭痛学会の基準に当てはまらないことを理由
に脳脊髄液減少症の発症を否定。2審の審理中の昨年10月に研究班が画像で漏
出を見つける新たな診断基準を公表。班員である前原君の主治医が今年2月「新
基準に合致する」との意見書を提出していたが、2審判決は新基準に一言も言及
しなかった。
前原君は事故が原因で成長ホルモンの異常や高次脳機能障害とも診断されたが、
判決は、いずれも事故との因果関係を否定した。
前原君は小学3年の時、自転車に乗っていて車にひかれた。激しい頭痛や吐き気
などが続き、事故の翌月に脳脊髄液減少症と診断され、小5と小6の時に1回ず
つ治療を受けた。現在は完治している。加害者側は、事故から半年間で治療費の
支払いを停止したため、訴訟となった。
◇「はっきりさせたかった」…原告
「僕の中で髄液が漏れたということを、はっきりさせたかった」。判決内容を
弁護士から説明され、前原海斗君は小さな声で言った。
東京高裁は3月に入って和解を提案してきた。裁判官の言葉からは判決を変更
することに消極的な姿勢が感じられたが、裁判官に「勝ちたいです」と伝え、判
決を求めた。両親も気持ちを尊重した。
事故後、体調不良で寝たきりとなり、小学4年から養護学校へ。中学は地元に
通ったが、通院で休みがちだった。それだけに「家族に迷惑をかけ続けてきた」
と強く感じている。なかなか病気を分かってくれる医師に巡り合えず、友人や教
師からも怠けていると思われた。「人を信じられなくなった」。その半面、「支
えてくれた人も大勢いた」。
事故から8年、提訴から5年。裁判所は思いに応えなかった。「これからは普通
に学校に通い、みんなと同じような生活を送りたい」。失われた時間を取り戻そ
うと考えている。
◇解説…期待裏切る判断回避
日本で交通事故の被害者が脳脊髄(せきずい)液減少症と診断されるようにな
って約10年。昨年10月に新しい診断基準ができ、補償問題の前進が期待され
てきただけに、裁判所が判断をしなかったことは批判を免れない。
被害者の高校生には「頭を上げていると頭痛がする」という典型的な症状があ
ったうえ、2回の手術で完治している。新しい診断基準ができてから2審判決ま
でに十分な時間があったにもかかわらず、判決からはこの点について検討を加え
た形跡はうかがえない。
損保業界は「医学界の統一見解でない」と補償に応じず、裁判所もこれを追認
してきた。一連の訴訟で、損保側は当初、「髄液は漏れない」との整形外科医の
意見を否定の論拠にしていた。やがてそれが通用しなくなると、国際頭痛学会の
診断基準(04年)に合致するかを争うようになった。この基準も今では「厳し
すぎ、多くの患者を見つけられない」と、学会内部から反省の声が上がっている。
車社会が始まってから数え切れない患者が見逃され、裁判でも敗訴してきた。
「国際頭痛学会の基準は科学的でない」と、日本で新基準が策定された経緯を考
えれば、裁判所としての評価を示すべきだった。【渡辺暖】
◇脳脊髄液減少症の診断基準◇
国の研究班が昨年10月に公表した新基準は、「頭を上げていると頭痛がする」
という患者を対象に、頭部と脊髄(せきずい)のMRI(磁気共鳴画像化装置)
や、造影剤を使ったミエロCTと呼ばれる検査などの画像から、髄液が漏れてい
るかを判定する。この病気に関係する各学会が承認して日本の医学界の統一見解
と認められた。国際頭痛学会の基準(04年)は、症状を中心にみて、特定の治
療で症状がなくなればこの病気だと診断する。このため「不要な治療を助長する」
と批判があった。